アルバイトやパートなどの非正規雇用労働者を正社員雇用するなど、労働者の処遇改善のために設けられたキャリアアップ助成金制度。
労働者の働くモチベーションアップと共に、非正規雇用労働者を雇用している事業主にとっても、非常にメリットの大きい制度となっています。
しかし、キャリアアップ助成金は支給されないケースもあり、内容をしっかりと理解しておく事が重要です。
また不正受給した場合、罰則などのペナルティもあるので注意が必要なのです。
そこで今回は、キャリアアップ助成金は支給されないケースがある?というテーマで、不正受給した場合の罰則や審査通過のためのコツなども併せて解説していきたいと思います。
キャリアアップ助成金は支給されないケースもある?
それでは早速、キャリアアップ助成金が支給されないケースについて解説していきましょう。
労働者を解雇した場合
まず1つ目は、労働者を解雇した場合です。
キャリアアップ助成金は、一定の期間中において雇用保険被保険者を解雇や退職勧奨により退職させた場合は、支給されないという規定が設けられています。
雇用保険被保険者である事が条件になるので、支給対象である労働者のほかに被験者である労働者は全て当てはまります。
そのため、支給対象者だけだと思っていて、他の被保険者を解雇した場合、キャリアアップ助成金が支給されないという事態になってしまう可能性があるので注意しましょう。
申請期限を過ぎてしまった場合
2つ目は、申請期限を過ぎてしまった場合です。
キャリアアップ助成金は、支給申請期間というものが設けられています。
キャリアアップ助成金は、「転換後6ヶ月分の賃金を支給した日の翌日」が起算日となり「2ヶ月間」が支給申請期間となっています。
この期間を過ぎてしまうと、申請出来ず支給されなくなってしまうので注意しましょう。
申請の段取りや書類上の不足があった場合
3つ目は、申請の段取りや書類上の不足があった場合です。
キャリアアップ助成金の支給申請には、多くの必要書類を揃える事になります。
キャリアアップ助成金の必要書類は、常に変動するので最新の情報を確認して揃える必要があるのです。
「キャリアアップ助成金のパンフレット」に書かれている必要書類はもちろんですが、その他にも条件などによって書かれていない書類を求められるケースもあります。
そのため、申請期間ギリギリですと、書類を揃える前に期限が過ぎてしまう可能性もあるので注意が必要です。
支給要件の確認不足
そして4つ目は、支給要件の確認不足です。
実は、意外とこれが支給されないケースで一番多い事かもしれません。
キャリアアップ助成金の支給要件は、転換制度に関して就業規則に規定していなければならないという決まりがあります。
その規定では、「手続き・要件・実施時期」が就業規則にしっかりと明記されていなければならず、このような内容が書かれていない就業規則であった場合は支給されないケースがあるのです。
キャリアアップ助成金を不正受給した場合の罰則とは?
では次に、キャリアアップ助成金を不正受給した場合には、どのような罰則があるのかという部分を解説していきましょう。
刑事告訴に発展する可能性がある
1つ目は、刑事告訴に発展する可能性があるという事です。
全てのケースではありませんが、不正受給の内容によっては刑事告訴に発展する可能性があります。
例えば、書類を偽装して助成金を受給した場合、詐欺罪(刑法第246条)に該当します。
また、詐欺罪では懲役1年6ヶ月の判決が下った例もあり、場合によっては書類送検や実刑判決が言い渡される事もあります。
事業所名が公表される
2つ目は、事業所名が公表されるという事です。
キャリアアップ助成金の不正受給を行うと、「事業主の名称」「代表者氏名」「事業所の名称」「所在地」「概要」「不正受給の金額」「内容」などが事業所がある労働局のホームページにて公表されます。
このような事態になると、今後の取引において信用を失い支障が出る事になるでしょう。
キャリアアップ助成金の返還を求められる
3つ目は、キャリアアップ助成金の返還を求められるという事です。
キャリアアップ助成金の不正受給が発覚した場合は、下記の金額が請求されます。
・不正受給によって返還を求められた金額
・不正受給の日の翌日から給付の日まで、年5%の割合で算定した延滞金
・不正受給により返還を求められた金額の20%に相当する額
最低でも5年間は助成金の申請が出来ない
そして4つ目は、最低でも5年間は助成金の申請が出来ないという事です。
不正受給と認定されると、支給前であっても不支給決定日または支給決定取り消し日から起算して5年間は、雇用に関係する助成金の支給がされなくなります。
キャリアアップ助成金の審査通過のためのコツ
それでは最後に、キャリアアップ助成金の審査通過のためのコツをご紹介していきたいと思います。
キャリアアップ助成金の申請を通過するための最大のコツは、日々の労働基準法遵守と言えます。
キャリアアップ助成金を受給するためには、厳しい審査を通過する必要があるため、就業規則や賃金規定などに問題がないか常にチェックしておく事が重要なのです。
そしてもう一つのコツとしては、総務人事系システムの活用です。
助成金の申請は、非常に複雑であるため、該当分野に知見のある社会保険労務士を通して手続きを行う人も多いでしょう。
しかし人事労務部門は今後、時代の流れと共に膨大な仕事量の負担がかかると予想されており、先を見越して業務の効率化を図っておく必要があります。
そのためには、業務を効率よく進める仕組みとして総務人事系システムを導入し、社内用の書類やリスト作成など業務を自動化できる総務人事系システム「総務人事奉行クラウド」の活用がおすすめされているのです。
まとめ
さて今回は、キャリアアップ助成金が支給されないケースがある?というテーマで、不正受給した場合の罰則や審査通過しやすいコツなども併せて解説してみました。
キャリアアップ助成金は、非常に魅力的な制度なので多くの事業主が支給申請を行います。
そのため、書類などを偽装して不正に受給してしまおうとする事業主も存在しますが、一度の不正受給で失う信用は大きいという事を肝に銘じておきましょう。
キャリアアップ助成金をスムーズに受給するためには、常に変動する支給要件を確認し、日々の労働基準法遵守が一番の近道と言えますね。
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